27 10月 和服を着ましょう
私は商家の娘です。祖父母も両親も呉服を商っていました。学校から帰ると、リビングには京都の問屋さんが数人「お帰り、かすみちゃん!」とくつろいでいたものです。
両親は孫のトシキとミサキのために産着(うぶぎ)を準備してくれました。ミサキはお宮参りと3歳の七五三で着用し、2人の姪も同じ流れでそれぞれ2回着ています。この着物は6回イベントで大活躍し、その後和箪笥で大事に保管されました。この着物、29歳。
そして、もうひとつ世代は下がり、私の孫が七五三で着ます。もう8回も家族の女の子達をかわいらしく飾ってくれました。そして8月、男の子の孫を授かりました。この子もトシキの着た産着でお宮参りです。31歳の着物ですが、これまたちっとも古くありません。

服が売れない時代です。ファストファッションは1Seasonで命を終え、大量に製作されたお洋服は同じように大量廃棄されます。
「下賜」と言う言葉があります。平安時代に天皇など身分の高い人が身分の低い人に物を与えることがよくありました。着物もよく下賜されたそうです。着物は代々受け継がれるものでした。
もう一つ私達には財産があります。振り袖です。私、妹、娘、2人の姪。3代目孫のアオイちゃんがその着物を着るのは17年後。着物はモノでしかありません。しかし、その着物を見ると亡き父を身近に感じます。ひいおじいちゃんを知らなくても、家族の愛情は代々受け継がれていきます。